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会員サロン

こだわり住宅賞

平成19年度 「建築士の日」の事業 第9回「こだわり住宅賞」

≪滋賀県知事賞≫  増田龍一 邸

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≪滋賀県知事賞≫  増田龍一 邸 ≪滋賀県知事賞≫  増田龍一 邸 ≪滋賀県知事賞≫  増田龍一 邸 ≪滋賀県知事賞≫  増田龍一 邸
≪滋賀県知事賞≫  増田龍一 邸 ≪滋賀県知事賞≫  増田龍一 邸

増田邸は100年余を耐え抜き、現在まで先祖から大切に受け継がれた貴重な古民家である。しかしながら近年ますます老朽化が進み、それに加えて先の阪神淡路大震災で各所に被害を被った。

そこで我が家の今後について家族の間でいろいろ論議が交わされた。父・長男の男性軍は改築案、祖母・母・長女の女性軍は修復再生案と互いに意見が対立した。何回となく激論が繰り返されたが結論は案外簡単であった。

それは長年に亘り家族の生活を支え、生命を守ってきた母屋の出雲大社の建築工法として伝わる牛梁組工法による堅固な小屋組の持つ無言の説得であった。この宝物の保存ということで意見の一致をみた。またこの大切さを家族に必死の説得を続けたアーチィストのお嬢さんの努力を見逃すことはできない。まさに女性軍の勝利である。

外部の修復は建設当時の意匠を忠実に守った補修とし、その中で中二階に復元された虫子窓がこの建物の外部のデザインの質を一層高めている。

玄関踏込の吹抜け天井の化粧大空間は、あたかも明治時代にタイムスリップした世界で伝統工法による力強い松丸太の梁組と小屋組の構造美、その中にうまく現代を謳いあげた新感覚でデザインされた長提灯風のペンダントから漏れる淡い光が、新旧一体となった独特の雰囲気を醸し出している。

その他建物各所にこだわりの跡が目に留まる。例えば、玄関敷石の両サイドに埋め込まれたお孫さんの足型、台所の壁に嵌め込まれた絵皿、お嬢さん手造りの手洗いボールや照明セード等、今後この家の歴史とともに歩み続けることだろう。

嘉田知事のモットーである「もったいないの心」がこれからのこだわりの滋賀の住まいづくりと住まい方にも一石を投じたこととなるだろう。

まさにこの古民家の再生は滋賀県知事賞にもっともふさわしい作品である。

“一度失った貴重な文化遺産は二度と返ってこない”

審査委員長 本城 博一

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